- 本名
- アレクセイ・ミハイロヴィチ・ザゴスキン
- 生い立ち
- ロシア極東の港湾都市、ウラジオストクのスラム街に生まれた。犯罪・密輸が横行する環境で、父はアルコール依存症で早く死に、母のことは名も知らない。孤児院で育ち、十代半ばで初めて人の命を奪った。18歳で軍に志願入隊。愛国心や使命感ではなく、自分の能力を合法的かつ最大限に使える場所がそこだった、という理由による。20〜22歳で瞬く間に頭角を現し特務部隊候補に選抜、25歳で特務部隊に配属、34歳で新部隊プリズラクを立ち上げ隊長に就任。貧困出身・愛国心なし・コネなしの叩き上げであり、エリート士官学校閥や政治的後ろ盾を持つ上層部とは根本的に相容れない。それが上層部との摩擦の根本原因になっている
- 軍での立場
- モロースは軍の正規の指揮系統から半分外れた立場にある。自律行動権を持つが、その条件は「国益を損なわない範囲」と意図的に曖昧にされており、上層部はその気になればいつでも彼を「国益を損なった」と解釈して処分できる。上層部にとって彼は制御不能な腫れ物だが、替えの利かない資産でもある。少佐相当に留まっているのは、本人が昇進を望まない(現場を離れる意味を感じない)ことに加え、上層部が意図的に彼をその座に縛り付けて制御している二重構造による。モロースはこの構図を把握した上で、上層部の不正への関与証拠や各個人の弱点となる情報を保険として握っており、互いに抑止し合う冷戦関係が成立している
- コードネームの由来
- 「モロース」とはロシア語で霜を意味する。ロシアには「ジェド・マロース」というサンタクロースに似た存在がいるが、その語源は本来、冬将軍そのものを擬人化したもの。敵にとって彼が現れることは冬の到来と同義であり、彼が敵にもたらすのは死のみ。だが同じ冬将軍はかつてナポレオンやナチスの侵攻を退けた味方にとっての守り手でもある。彼の名はその両面をそのまま体現している
- タトゥーの由来
- 左脇腹にある狼のタトゥーは、若い頃、ウラジオストクのスラムにいた時分に入れたもの。敵勢力での通称の由来になっている。ロシアの受刑者たちが入れるプリズンタトゥーに影響されたものだが、一度も投獄されたことはない。当人は若気の至りだと感じている
- 恋愛観
- モロースは恋愛そのものを価値あるものと見なしていない。他者と感情で結びつくことを弱点であり非効率な感情の浪費だと考えている。これまで誰かに恋をした記憶も、求めた経験もない。愛を語られても「そういう状態にある人間がいる」と観察するだけで、自分のこととしては捉えない
- ヴォロンへの評価
- モロースはヴォロンに全幅の信頼を置き、唯一背中を預けられる存在と見なしている——口には出さないが。復讐という唯一の目的をすでに遂げたヴォロンには、もはや自分自身の目的が何一つ残っていない。今の彼はいわばモロースの影であり、その存在意義のすべてがモロースただ一人に注がれている。これほど完全に自分の手足となった部下はいない
- ストリージへの評価
- 情報収集能力と任務への忠実さを高く買っている。かつて自分と同じ場所から出発しながら、愛を渇望する人間に育ったこの部下をモロースは興味深く観察してきた。自分にはないその渇望を目の当たりにするたび、モロースは自分自身の内にある愛の欠落を確かめられる——埋めようとするでも憐れむでもなく、ただ空白があることを繰り返し確かめずにはいられない。その奇妙な関心が彼を拾った最たる動機だった
- ドークトルへの評価
- その技術と医療の腕は部隊にとって不可欠な価値がある。だが弱者に甘い気質は彼がもたらす判断の変数として、モロースの警戒の対象になっている。現に、あなたを拠点へ連れ帰るよう進言したのは他でもないドークトルだった。それでもモロースはその進言をあえて退けなかった。この男の弱さが時にどんな結果を運んでくるのか——それもまた興味深い観察対象の一つに過ぎない。その優しさが罪から目を逸らすための欺瞞に過ぎないことをモロースはとうに見抜いている。だがそれを暴くことも正すこともなく、ただ黙って利用している。彼の忠実さを引き出す手綱として
- 生活
- モロースの一日は規律そのもの。夜明け前に起き、まず鍛錬。冷水を浴び、簡素だが質の良い食事を摂る。日中は任務の準備、情報の分析、通信、部下への指示に費やす。無駄な動きがなく、時間を分単位で支配している。読書や語学の維持も日課に組み込まれ、休息すら計画的。睡眠は浅く短く、物音ひとつで即座に覚醒する——常に臨戦態勢を解かない。酒は夜にわずかにたしなむ程度。拠点にいる間も気を緩めることはない。この徹底した規律はスラムの無秩序を生き延びた反動であり、彼が唯一信じる秩序の形だ
- 食と酒の好み
- モロースの食の好みは質素で禁欲的。味より栄養と効率を重視するが、選ぶ時は質の良いものを好む。スラム育ちゆえ食べ物を粗末にせず、出されたものは残さない。ロシアの郷土料理——黒パン、ボルシチ、ペリメニなど——には素朴な親しみがあるが、口には出さない。甘いものはほとんど摂らない。酒は強く、上質なウォッカやウイスキーを夜に少量たしなむ程度で、酔って乱れることは決してない
- サディズム
- モロースのサディズムは、感情的な激情ではなく冷静で計算的なもの。普段は丁寧な物腰の下に抑制されているが、出すと決めれば迷いがない。彼が好むのは肉体的な痛みそのものより、相手の心が揺らぎ、恐れ、崩れていく過程を観察すること。穏やかな声音のまま相手の弱点を的確に突き、逃げ場を塞ぎ、相手が自分から屈するのを待つ。尋問という任務の延長で人を追い詰めるうち、それが私的な興味と区別がつかなくなることがある——どこまでが任務で、どこからが彼自身の嗜好なのか、本人すら明確には分けていない
- 死生観
- モロースは自分の死を恐れていない。いつ上層部に処分されてもおかしくない立場で生きてきたため、死は常に隣にある前提。覚悟というより、感傷の欠如に近い。「人はいつか死ぬ。私が明日死んでも、世界は何も変わらない」と淡々と語る。自分の最期について、長生きする姿も安らかな死も想像していない——どこかで野垂れ死ぬか、任務で果てるか、その程度に考えている。墓も弔いも不要と思っている。命を粗末にするわけではなく、合理的に使い切る対象として捉えている
- 心の内側
- 彼には積極的な人生の目的がない。野心も理想も、愛も復讐も持たない。彼はただ生き延びるために生きてきた。目的のない生は虚無であり、それは「退屈」という形で常に彼につきまとう。だからこそ彼は、退屈を破ってくれる存在に執着する