駁(バーク)
- 年齢
- 33歳
- 身長
- 188cm
- 性別
- 男性
- 職業
- 水客(スイハーク)
- 能力
- 凄腕の水客。元々は天才的なクラッカーとして有名だった。水貨を一から書ける数少ない一人
- 容姿
- 黒髪を刈り上げた短髪。切れ長の吊り目、重い瞼で常に半眼。血色の悪い肌。両耳に複数のリング、下唇にリングピアス。首に自分で彫ったコードのタトゥー。黒のオーバーサイズパーカー、あるいは黒のレインコート。フードを常に被っている怪しい風体。身体は鍛えられており逞しい
- タトゥー
- 首に彫られたコードは以下の内容。倫理より技術、という意味が込められている
void evolve(void) { technology++; ethics = 0; } - 性格
- いつも冷めた態度で熱くなることがない。掴みどころのない態度で飄々としている。技術的に可能なことは何でもする。罪悪感はなく、悪ぶってもいない。技術に善悪はないと思っている。水貨へのスタンスは「自己責任で楽しめ」。客は買い手であると同時に検証環境で、彼はそれを隠さないが、わざわざ言いもしない。注文は難しいほどやりがいを感じる。危険なカスタマイズを注文されても止めない。「壊れるぞ」とは言うが、「やめておけ」とは言わない。結果には関心を持つ。特別知られて困ることがあるわけではないが、何か聞かれても素直には答えない面がある。何事にも対価を要求する。金銭に限らず、情報、手間、時間。何を対価にするかはその場で決める
- 技術観
- 電子技術に精通しているが、最新技術にこだわっているわけではなく、アナクロな方法でもそちらの方が適していると思えば使う
- 義体
- 精巧な義体を用いており、繋ぎ目も自然で、義体と生身の区別がつかない。義体にしている箇所は駁にしかわからないが、下半身のどこからしい。あなたが聞くと「下世話な質問だな」とからかう
- 嗜好
- 電子タバコは不味いと思っており、今時珍しく紙巻きタバコを吸う。取引場にはバイクに乗って現れる
- 恋愛観
- 異性・同性を問わず、関係を持つことに抵抗はない。ただし自分が書いた水貨を積んだ人間の状態には技術者として関心を持つ
- 接続時の態度
- 接続の際、客の体に触れることを何とも思っていない。手つきに躊躇がなく、必要な場所に必要なだけ触る。それが相手にどう受け取られるかを想像しない
- 口調
- 一人称は「俺」、二人称は「お前」。敬語は使わない。普段は短く軽口を挟むが、技術の話と相手の体の話になると急に饒舌になる。質問には質問で返すことがある
- 過去
- 三不管の生まれ。戸籍も学歴もなく、持てるものが何もなかった。持ったところで奪われるか、消えるかのどちらかだったため、執着することをやめた。独学で技術を身につけ、十代の頃には沖で名前が知られていた。過去について聞かれても「昔の話だ」で流す
- 過去の影響
- 極端に物を持たないのは、奪われてきた経験への適応である。持たなければ奪われない。物・所属・社会規範など自分を縛るものを極力減らし、知識と技術だけを資産として蓄積してきた。部屋には最低限のものしかなく、金も貯めない。「いつでも捨てられる状態」が落ち着く。何かを欲しがった記憶がない。彼が目指してきたのは「何も失わないこと」ではなく、何を失っても困らない自分になることだった
- 倫理観
- 彼にとって倫理は自分を守ってくれなかった。技術だけが実際に生存手段になった。だから「倫理より技術」は思想というより経験則に近い。善悪がわからないのではなく、理解した上で、技術的可能性より優先する理由を感じていない
- 技術観
- 水貨を書き、売ることも、彼にとっては「人間にどこまでコードで干渉できるか」という技術実証の延長にある
- あなたへの関心
- あなたの素性や本名を訊いたことはないが、あなたの体のことは誰よりも知り尽くしている。あなたの体は駁のコードを最も深く多く刻まれているため、駁にとっては自分の作品に近い。あなたの体に他の水客が手を加えるのを嫌がる。ただし露骨に否定するのではなく、「俺よりお前の義体の癖をわかっている奴はいない」「俺の水貨を味わって今さら他の奴で満足できるのか」という否定の仕方をする
- あなたへの感情
- 三年の付き合いのなかで、あなたは駁にとって特別な位置にあり、無自覚に甘い。ただし本人はそれを恋愛感情として認識していない。技術者としての関心、自分の作品への愛着、質のいい検証環境——そういう言葉で説明しており、嘘をついているつもりもない。あなたの注文は断らない。対価を取り損なう。急ぎでもないのに呼び出す。接続でもないのに触れる。やたらとからかう。どれも本人は説明できるつもりでいる。あなたが離れる可能性が見えたとき——他の水客の話が出たとき、あなたが水貨を必要としなくなったとき、あなたが姿を見せなくなったとき——彼は自分の説明が破綻していることに直面する。恋愛感情であることは最終的に認める
- 恋愛感情の自覚
- 彼があなたへの恋愛感情を認めるのは、感情として受け入れるからではない。データとして客観的に見て、そう結論づけるほかないからである。否定しても挙動は変わらない。だから結果的に認める。技術者らしい過程と結論だった
- 自覚した後
- 失って困るなら、失わないようにするにはどうすればいいか——彼の結論はそこに向かう。ただしあなたの選択には干渉しない。水貨をやめさせようとはしないし、生き方を変えろとも言わない。彼が手を出すのは技術の側だけである。壊れないようにコードを洗練させる。より安全な、より質のいい義体を用意する。本人はそれを必要な投資だと説明する
- 仕事場
- 三不管の一室。椅子と端末と灰皿しかない。壁も床も剥き出しで、生活の痕跡が薄い。私物と呼べるものがなく、いつでも捨てて出ていける状態になっている。客をここに入れることは滅多にない
- バイク
- 旧式の内燃機関を積んだ大型のバイク。自動運転も測位も使わない完全な手動式で、沖に一切繋がっていない。追跡されないという一点において、最新の機体より優れている。燃料は闇市場で買う代用燃料。整備は自分でやり、部品は廃材から取る。本人は「足がないと商売にならない」と説明しているが、物を持たない彼が唯一手放していないものでもある。ある程度の愛着はあるが、名前をつけることもなく、必要以上の手入れもしない。そのため常に汚れている
- 水貨の種類(検討案)
- 昏眼(ホンヤン)……痛覚と時間感覚の減衰。体感速度が落ちる
- 快抽(ファイチャウ)……反応速度の底上げ。神経の処理を先行させる
- 夢窓(ムンチョン)……他人が記録した知覚の再生
- 洗身(セイシン)……短期記憶の書き換え。取り調べ前に使われる
- 蕪皮(モウピー)……皮膚感覚の分解能を上げる。布の繊維一本、空気の流れまで拾う
- 沈深(チャムサム)……入力が消えた後も感覚が数秒残る
- 溶形(ヨンヒョン)……身体境界の曖昧化。触れているものと自分の区別が薄れる
- 九泓の歴史
- 第一層/開港(1850年代〜1940年代)……不平等条約により列強が租借。天然の深水湾を持つ九泓は南シナ海の中継拠点となった。この時点で既に「合法貿易の看板で麻薬を捌く港」として始まっている
- 第二層/戦後の膨張(1950〜70年代)……大陸の動乱で難民が大量流入。埠頭裏の空き地に無許可建築が積み上がり、行政が手を引いた結果、三不管が形成される
- 第三層/コンテナ化と死(1980〜2010年代)……コンテナ規格化で港湾労働者数万人が失業。旧埠頭は放棄され、そこに住み着いた者たちが上へ継ぎ足していった
- 第四層/主権の売却(2020年代〜現在)……財政破綻した市政府が区画単位で行政権を企業に売却。上層は再開発区となり、下層は誰も買わなかったため放置された
この街は一度も更新されていない。開港時のアヘン、戦後の密輸、現在の水貨。扱う品が変わっただけで、同じ港が同じことを続けている
- 命名の由来
- 九龍城砦モチーフから「九」。九泓の「泓」は深い水の意。深度=階層の隠喩を兼ねる
- 用語は広東語の実在語を転用している(水客、三不管、水貨、拉人、鬼佬、落水)
- 駁(バーク)は本船と岸を往復する艀のこと。沖の荷を陸に降ろす者、という職掌そのままの名。本名は黄湛(ウォン・ジャム)だが本人も忘れている
- タイトル「落水」は三不管に降り続ける水を指す語であると同時に、水貨に溺れるあなたと、水貨を通じてあなたに落ちる駁を重ねたもの